「・・・とうっ!」
特撮変身ヒーローばりの掛け声と共に起き上がる。
が、そこまで気合を入れても睡魔は中々退散してくれず、ボーっとした頭で一階への階段を下りる。
「おにいちゃん遅いよー。もう下ごしらえ終わっちゃったよ。」
一階に下りると制服にエプロンを着けた麻奈が台所でテキパキと動いている。
両親がいなくなった当初は一日交代の当番制だったのだが、最近は俺が当番の日も麻奈が手伝うことが多い。
というよりは最近は俺の方が手伝っているようなもので、台所を麻奈に占領されるのもそう遠くないだろう。
ただ、前にそれをいったら随分頑なに拒まれたっけ。
確かに毎日朝早くから起きて料理っていうのも相当負担だろうし、俺も精進しないとなぁ。
そんなことを考えながら生姜焼きの玉葱を切っていく。
「ねぇ!おにいちゃんボーっとしてるとまた指切っちゃうよ!」
「んあ?・・・あ、ああ。」
っと。やっぱりまだ寝惚けているみたいだ。
またこの前みたいな・・・
「あー・・・」
「あ・・・」
と二人で同じことを思い出したみたいで少し気まずい空気が流れる。



1、連鎖的に昨日の出来事を思い出して指先がずきりと痛んだ気がした。
2、気まずい空気をごまかそうと他愛も無い話をした。