さっきの喧騒もあってか、ここは心温まる本が読みたい。
恋愛小説とかどうだろうか。
「んー、恋愛小説が読みたいな」
「恋愛小説・・・ですか・・・」
そう言うと、彼女は黙って考え込んでしまった。
眉根を寄せてすらいる。どうやらあまり読まないジャンルらしい。
彼女が考えること数分。
「ごめんなさい・・・ちょっと浮かばないです・・・」
まぁ、世の中には膨大な数の本がある。
図書委員とはいえ人間だ。読まないジャンルだってあるだろう。
「いや、気にしないでいいよ。いきなり聞いて、こっちも悪かった」
さて、これから昼休みどうしようかなぁ。
そんな事を考えていると、不意に、彼女が口を開いた。
「私は・・・」
「ん?」
「ホラーが好きなんです・・・他の人が・・・あまり読まないような・・・」
ホラーか。個人的にはやや好きな方のジャンルだ。
他の人が読まないのも読むということは、結構ホラー好きなのかもしれない。
と、昼休み終了の鐘が鳴った。
「あ、もう教室に戻らないと」
とりあえず、ホラーの話は俺も少し興味があったので、彼女の名前くらいは聞いておこうと思った。
「あのさ、ホラーの話なんだけど・・・少し興味あるから、今度いくつか教えてくれないかな?」
「あ・・・は、はい!」
「俺、高橋って言うけど。君の名前は?」
「私・・・ですか?」
「うん」
「あ・・・青木梓です」
「青木さんて言うんだ。以後よろしく」
そう言うと俺は図書室を出た。