・・・・とりあえず麻奈に謝ろう。
「麻奈を怒らすと後が怖いからな・・・」
昔、麻奈を怒らした所為で夕飯抜きにされたことがある。
そんなことを思い出しながら俺は玄関まで行く。
「お兄ちゃん!どういうこと!?」
俺の顔をみるやいなや、麻奈が猛攻撃してくる。
「いや・・・なんていうか・・・その・・・すまんかった」
素直に謝る俺、なんて健気なんだ・・・。
「すまんじゃわからないよ!ちゃんと説明して!」
やっぱり謝っただけじゃ許してくれそうにない。
「いや、説明というか、昨日話したとおり」
正直説明めんどくせー。
などと思ってるあいだにも麻奈はどんどん攻撃を浴びせてくる。
「だから私は高橋君を起こしに来ただけです!」
久野、お前が喋ると逆効果だ・・・。
早く終わらしてぇ。
しかたない・・・アレをつかうか。
「麻奈、今日帰りにお前の大〜っ好きなエクレアを買ってきてやる、だから許してくれ」
瞬間、麻奈は硬直する。
「エクレアなんかにつられないもん・・・」
だめだったか・・・。
しかしここで諦める俺じゃない。
「マンゴーも買ってきてやるぞ」
また、麻奈が硬直する。
どうやら麻奈の頭の中で東大入試クラスの計算が行われているようだ。
30秒後、やっと口を開いた。
「ま、まあ私の優しさに免じて許してあげる・・・」
優しさじゃなくてエクレアとマンゴーのおかげだ。
が、これ以上話をややこしくしたくないのでここはあえてつっこまないでおく。
「では高橋君、学校へ行きましょう!」
久野が張り切って言う。
そこで気づいたが、俺の玄関の前に結構なギャラリーができている。
「とりあえず朝飯食ってから・・・」
このギャラリーを前に久野と一緒に登校する勇気はない。
「しかたないですね・・・早くしてくださいよ」
久野も了承してくれたようだ。